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2009年度大巡検 諏訪巡検

 2009年度の巡検は、6月29日(月曜日)から7月3日(金曜日)の4泊5日で、諏訪湖周辺で行われた。現在の地理学コースでは、学部3年生のみ宿泊巡検が設けられていて、今回の巡検はそれにあたる。また、この巡検は院生(主に修士課程1年生)のフィールドワークの演習もかねているので、参加学生は学部の3年生(今年度は6名)と修士課程の学生5名(うち1名はティーチングアシスタントとして)、教員は水野と長谷川の2名の計13名で行った。宿泊は諏訪湖のほとりにある信州大学山地水環境教育研究センターを利用した。1泊1名1,900円という破格の値段で泊まることができた。センターの方のお話では、大学附属の臨海実習宿泊施設としては、日本で唯一温泉があるそうで、源泉掛け流しの温泉を満喫することができた。大学の実習目的などの場合には信州大学の学生以外でも宿泊できるそうである。
 6月29日は5限まで授業がある学生があったため、夜10時に現地集合、簡単なミーティングを行った。6月30日は終日バスをチャーターし、諏訪湖周辺の見所を周った。7月1日から3日はおのおの興味のあるテーマを事前に設定し、近い興味の学生とグループを作り、グループごとに現地調査を行った。


一日目 終日バスツアーの概要

 ここでは一日目の終日バスツアーの概要を述べることとする。予定していた行程は以下のとおりである。


9:00宿出発
9:151.諏訪大社(下社秋宮)、御柱など神社内の観察(20分)、下諏訪の宿場町観察(20分)
10:102.下社木落し坂見学(10分)
10:453.釜口水門見学(10分)
11:154.湖岸通りを通って、間欠泉センター(11:30に噴出、センターの方から説明)
12:00昼食(甲州名物ほうとうの小作・信州名物そばのそば蔵の選択制、1時間)
13:005.高島城、諏訪市役所(場所だけ確認、30分)
13:306.諏訪市図書館(所蔵物の簡単なチェック、40分)
14:157.諏訪市博物館(30分学芸員さんからの説明、その後自由見学1時間、入館料310)、足湯、希望者は上社見学
16:008.宮坂醸造(真澄の蔵元)、製造工程DVD,酒造りの話、きき酒(300円)(所要1時間)
19:309.立石展望台(夕映えの諏訪湖を一望)
20:30宿に戻る、おやきの夕食

 以下に、順を追って簡単な説明を述べる。


1.下社秋宮
 諏訪地方には言うまでもなく諏訪大社がある。諏訪大社は上社(男神が祭られている)と下社(女神が祭られている)に分かれており、上社は本宮と前宮、下社は春宮と秋宮に分かれている。今回は秋宮を訪れた。御柱は「御山の大木、里に下りて神となる」という歌にあるように、神社の裏にある山で見立てられたりっぱなもみの木を数え年で7年に1度切り出し、氏子らが綱で神社まで曳いてきて、神社のご神体の四隅に建てて、天と結ぶ空間を作り出しているものである(写真のような柱が4本立っている)。全国にある諏訪神社では、その御柱の一部が飾られているところもある。   
秋宮 一の御柱
 
2.下社木落し坂
 下社の御柱を里まで引いてくる途中、急な坂を下らねばならない。この坂を木落し坂と呼ぶ。氏子たちはこの木落しの御柱の一番先頭に乗りたがり、昔は死者が出たこともあったらしい。学生たちはその勾配に驚いていた。
 
3.釜口水門
 諏訪湖から天竜川が流出しており、その流出口にある堰が釜口水門である。現在はこの水門によって諏訪湖の水位が調整されている。昔は、この流出口付近に土砂が多くたまり、諏訪湖が頻繁に氾濫していた。水門付近に、わずかだがアオコの発生が認められた。
 
4.間欠泉センター
 間欠泉の噴出は、現在、源泉の使用水量が大幅に増加したため、昔と比べて高さが低くなったそうである。間欠泉センターの源泉は七ツ釜源泉であるが、センターの方のお話では、現在はこの源泉を茅野市まで引いているらしい。間欠泉が噴出する瞬間は学生たちから歓声があがった。   
間欠泉の噴出する様子
 
5.高島城、諏訪市役所門
 この2施設は隣接している。市役所では諏訪市内の公共交通手段である、かりんちゃんバスの路線図や時刻表などを入手した。
 
6.諏訪市図書館
 諏訪市図書館には郷土資料が多く所蔵されているため、どのような資料があるのか簡単にチェックをした。何人かの学生は、翌日からの個人調査でも再訪していたようである。
 
7.諏訪市博物館
 学芸員のかたから御柱と御神渡りの説明をうける。御柱の木落しの映像にはみな驚いていた。博物館の敷地内にある足湯(神宮寺足湯、上諏訪温泉発祥の地と書かれた看板があった)は45℃あり、とても熱くて足をつけていられなかった。ちなみに、前日の夜、上諏訪駅構内の足湯に入った学生の話では、駅の足湯はちょうど良い温度だったそうである。
 なお、次の宮坂醸造へ行く前に、学生の希望により、タケヤ味噌の売店にあるごまみそソフトクリームを食べた。ほんのり味噌の味がして、とても美味であった。
 
8.宮坂醸造
 諏訪の銘酒「真澄」の醸造元である。東京のコンビニでも売っていたし、学生の話ではJALのファーストクラスでも採用されているようで、銘酒としての認知度は高いお酒であろう。今回のバスツアー企画にあたり、諏訪の地域に根ざしたものづくりの現場を訪ねたいと思っていた。味噌かお酒が良いだろうと思い、ほんの軽い気持ちでこの蔵元に見学をお願いしていたのだが、実際行ってみると、社長さん自ら対応してくださった。また、別室にパンフレット、お茶、スライドやビデオなどが用意され、2時間近い社長さんの詳しいお話を伺い、クイズに景品、いろいろなお酒の試飲をさせていただいたり、本当に恐縮するほど厚遇していただいた。お酒の試飲のときに今の時期お勧めの期間限定生酒をいただいたのが、「若い方にはまず、良いお酒を飲んでもらいたいので」とお店の方がおっしゃられていたのが印象的であった。蔵元を出たとき、営業時間を終了してすでに1時間半が経過していたと思う。のべ3時間以上お世話になったことになる。学生たちも社長さんのお酒造りに対する熱意に感激を受けていた。見学先として、宮坂醸造にお願いしてよかったと思った。   
賞状が壁一面に飾られている部屋で宮坂社長のお話を拝聴



お酒を試飲しながら、学生の質問に回答していただく
 
9.立石展望台
 この展望台からは諏訪湖とその周辺が一望できるので、諏訪湖の地形が良く分かる。展望台に着いた時には薄暗くなりかけていたが、それが予想に反して、諏訪盆地の夜景を見れることになり、学生たちは喜んでいたようだ。
 このあと、コンビニでおやきなどを買い、20時過ぎに宿に帰ってご飯を食べて、この日の諏訪めぐりは終了した。  
  
立石展望台から諏訪湖を望む
 

学生の調査テーマ

 2日目以降、学部生・院生が各自で取り組んだ調査のテーマです。
 なお、報告書は電子媒体では公開していません。地理学コース助手室において閲覧可能です。


テーマ(調査者)
諏訪の醸造(久島桃代)
霧ヶ峰における観光開発と環境保全のバランス(齋藤みどり)
霧ヶ峰のエコツーリズム(渡辺裕理子)
諏訪の寒天産業(松川千穂)
信州味噌(池田和子)
産業集積と学習地域(須賀あずさ)
開発型企業を目指す諏訪における中小企業調査(張金帛)
諏訪市・下諏訪町における観光形態の比較(吉江明日菜)
御柱祭 下社を中心に(児玉恵理)