| Sociology of Education
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アーネスト・ボイヤー、 喜多村和之ほか訳 『アメリカの大学・カレッジ』リクルート出版
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1980年代は、アメリカ人がその教育制度に対して徹底的な自己点検を行った時代である。本 書は、アメリカの大学が直面する基本的問題に真正面から接近し、改革の方向を具体的な処方 箋として提示した大著である。著者ボイヤーは、アメリカ教育界を代表するオピニオンリーダーの 一人であり、カーネギー教育振興財団の会長を務める。同財団は83年にも『ハイスクール』(邦 訳「アメリカの教育改革」)を出版して高校教育改革に対する大きな影響力を示したが、本書はそ の大学版として前作に続く大きな反響を呼んだ。 ボイヤーによれば、アメリカの大学の多くは、質の高い教育を提供する教育機関であるよりも、 むしろ学歴という資格付与機関としてのほうがはるかに繁栄しているという。改革されるべき緊急 の問題は、高校教育と高等教育との不連続な関係、大学教育の目標の混乱、教育の成果の測定 方法、大学と外部世界とのギャップなどの8つである。これらについて、合計1万人をこえる教授と 学生、高校生などを対象とする調査や、大学訪問調査に基づく現状分析がなされ、処方箋が提 示されている。 われわれ日本人にとっての本書の意義は、まず第一に断片的になりがちなアメリカ大学の包括 的な実像が理解できることだろう。大学人はもちろん、留学熱が盛んなことから高校教師にとって も利用価値は大きい。しかしより重要なのは、日本の教育改革に与える示唆である。先に上げた 大学教育の基本的問題は、驚くほど日本に共通した問題でもある。もちろん、日本の新制大学が アメリカをモデルとして構想されたとはいえ、私たちは彼らと同じ道を歩んできたわけではない。だ がそれらは、日本の大学が現に、そして近い将来においてかならず直面する問題の多くを含んで いる。日本でアメリカほど「大学の危機」が社会的に意識されているだろうか。 徹底した現状分析と、自己点検へのエネルギーを蓄えたアメリカ、しかも本書の作業を行った のは民間の財団である。「大学が問われる時代」が到来しようとしている。そのとき、日本の大学は 生き残る道を見い出すことができるだろうか。 以上 1996年12月5日 |
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