お茶の水女子大学教育社会学研究室
Sociology of Education

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耳塚寛明 書評集 (採集文献一覧へ戻る)
ジャック・グリーンシュタイン著、中山容訳『先生も人間です』 晶文社

 当たり前である。この「先生も人間です」というごく当たり前のタイトルが、教師万能幻想や「聖職 としての教職」という「危険な」(!)信念から、現実的な教師論の地平へと、私たちをかろうじて連 れ戻してくれる。
 著者グリーンシュタインはポーランド生まれのアメリカ人。37歳ではじめて教職につき、現場教 師13年、校長として10年をシカゴの公立小学校で勤めた。この本の目的は、教育現場の「本物 の世界」を描くことにある。第1章「『するな』をめぐって」にはじまる各章には、彼の教師、そして管 理職としての体験が豊富に、かつ淡々と語られている。
 ある教室風景が記述される。たとえば荒れる教室。黒板に課題、だが生徒は誰もやろうとしな い。本書を読むとこうした状況に否応なく放り込まれる。私ならどうするだろう。生徒や親のしつけ に責任を転嫁し教壇でただ嘆息するかもしれない。いくつもの、たぶん日本の教師も共通に遭遇 している状況の中で、著者が何を信じ、どう対処してきたのかが生き生きと語られる。成功例に重 点をおいたというが、失敗例も少なくない。
 本書には結論がない。しかし1章1章が、学校や教室という舞台で繰り広げられるドラマを見せ てくれる。著者もいうとおり、教えるというのは一種の芸で科学ではない。本書は長い経験の中で、 試行錯誤的に獲得してきた著者の芸の披露である。思わず膝を打つ、引用したい言葉が本書に は溢れているが、逐一紹介している余裕はない。ぜひお読みいただき先生方に推薦してほしい。 最後に一つだけ引用。「諸君の仕事は容易ではない。昔も今もだ。だが辛抱したまえ。子どもには 諸君が必要なのだ。」

以上

1996年12月5日
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