| Sociology of Education
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市川昭午『教育システムの日本的特質――外国人が見た日本の教育』 教育開発研究所
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自分がいったいどんな人間であるのかは、他者と見比べてはじめて明確になる。教育もまた例 外ではない。わが国の教育の特質、長所、短所を知るためには、外国との比較が有効である。外 国人による日本教育研究の中からめぼしい研究成果を取り上げ、それを手掛かりに教育システム の日本的特質を把握しようというユニークな試みが本書である。 本書は、外国人による日本教育研究を検討する意義を示した「序論」、具体的にそれらをレビュ ーした第1章から第29章、総括にあたる「補論」からなる。中心部分をなす各章には、高校教育を はじめ幼児教育、義務教育、教員、教育改革等、日本教育のほぼ全域をカバーする研究が紹介 ・検討されている。 日本教育に対する諸外国の関心は1975年頃から目につきはじめたという。それもかつてのよ うな珍しいものをつまみ食い的に紹介する異国趣味的アプローチから、後発国でありながら急速 な近代化に成功した点で開発途上国のモデルとみる見方を経て、現在では自分たちと同列にあ る先進国モデルの一つとして、欧米諸国においても認識されはじめているという。 外国人による日本教育研究のすべてが、私たちの姿を理解する上で役立つわけではない。た しかにそこには外国人特有の誤解や誤った解釈が少なくない。しかし、本書に紹介されている研 究の多くは、概して日本人自身と比べて、広い国際的視野から日本教育の全体像を大局的に捉 え、第三者的な立場から客観的な評価をすることに成功している。 価格や体裁から、本書を専門書として敬遠する読者が少なくないだろうが、語彙や論理は平易 でまことに読みやすい。日頃の教育実践や学校と社会の結びつきにおける「日本的特質」は、そ の社会に住む者、とりわけ教育関係者にとってはかえって見えにくい。日本教育の姿、教育実践 の日本的特質を、ややマクロな視点から相対化して見直してみたいという読者にぜひ薦めたい。 本書は、1988年に出された教育関係図書の中でも出色の1冊といっていいと思う。 以上 1996年12月5日 |
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