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今田高俊『社会階層と政治』東京大学出版会
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1980年代初頭まで、社会学の中で、多くの研究者が方法的斬新さを競い、国際的にみても卓 越した業績を生んできた領域があった。社会階層研究がそれである。社会階層論がメジャーであ りえたのは、その方法的冒険に対して研究者が職人気質的な誘惑を禁じえなかったからだけでは ない。むしろ、きわめてクリアーな理想がこの領域に貫徹していたためである。それを一言でいえ ば、前近代の遺物としての「不平等」の駆逐であった。世襲や家柄などの「属性」によって所属す る階層が決定される属性主義社会から、本人の努力や能力によって社会的上昇移動が可能な業 績主義社会へのシフト、それは効率と合理性を原則とする近代(モダン)が企てた、壮大なプロジ ェクトだった。そしてこのプロジェクトで中心的役割を担ってきたのが、人々に、その生れにかかわ らず上昇移動のチャンスを与えてくれる学校教育、学歴であった。 だが、80年代になると状況は一変する。一方で豊かな社会の到来による生活の多様化論が提 出され、他方で経済の成長神話の崩壊による階層固定化論が主張された。社会状況の変容は、 当然のことながらそれを捉える学問的パラダイムの革新を要請する。従来の枠組みでは現実の動 きを説明できなくなるからである。 この本のテーマは、戦後日本社会の展開に即して、近代化、産業化が社会階層に及ぼした影 響を実証的なデータをもって総決算し、さらに「脱モダン」における社会階層状況を予見しようとす るところにある。従来の社会階層研究のパラダイムはもちろんのこと、新たに提出された生活多様 化論も、階層固定化論も、脱モダンの階層状況を解読する上で不十分だというのが著者の基本 的な立場である。 実際のところ、著者もいうとおり脱モダンの階層状況を論じることは困難との印象を免れない。 ただしかし、効率と合理性を重視した、機能優位のモダンの変容を明示する現象が現れているこ とも事実である。この意味で本書は、従来支配的だった社会階層研究のパラダイムに対する根本 的挑戦であるとともに、脱モダンを説明するための理論枠組みを模索しようとした先駆的営みでも ある。著者は東工大教授(社会学)、他に『自己組織性ー社会理論の復活』『モダンの再構築』な どの著書がある。 以上 1996年12月5日 |
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