| Sociology of Education
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Thomas P. Rolhen, 1983, Japan's High School, The Regents of the University of California
トーマス・ローレン・友田泰正訳 『日本の高校ー成功と代償』 サイマル出版会(1988) |
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本書はアメリカの文化人類学者による日本の高等学校の観察の記録である。灘高など神戸市 の五校を一年間にわたり観察し、その社会的・歴史的背景から、学校建築や時間割り、学校運営 と人間関係、政治的環境、教育内容・方法、高校生のライフ・スタイルを、まさに総合的・具体的に 描写している。本書は、安易な日本人論や際物的な日本社会礼賛論では決してない。「アメリカ 教育研究協会賞」等受賞をはじめきわめて高い評価が与えられており、アメリカの大学では日本 の教育に関する必読参考文献とされている。 著者は日本の高校をアメリカの高校と比較することによって、次のような日本の社会構造、文 化、国家の効率性に関わる特質を見出す。第一に、日本の高校は成績によって序列化(学校格 差)した構造をもち、一種の実力主義に基づく階級意識の分化をもたらしている。日本社会の階 級構造を高校ほど明示しているものはない。第二に、大学入試という隠れたエンジンによって、高 校には勤勉性や従順性など日本文化の特性が反映され効率的な教育が可能となっているが、他 方で人間の精神に対してインスピレーションを与え得ない等の高価な代償をともなっている。第三 に、日本の学校教育の非常な効率性である。費やされた経費からみて日本の教育成果はきわめ て高い。日本の高校卒業生は平均的なアメリカの大学卒業生に匹敵する基礎知識を身につけて いるとまで著者はいう。日本教育の優秀性は卓越したエリートを育てたことにあるのではなく、むし ろ一般の人々の能力水準を高めたことにあり、それが社会全体の高い生産性を実現している。 魚が水の存在を日常的に意識できないように、私たちはふだん当然視している自身の社会構 造や文化の基本的特性を理解することが困難である。ローレンの丹念な観察は、まさに私たち自 身の姿を逆照射する格好の鏡となっている。 以上 1996年12月5日 |
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