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概要

2020年4月30日更新

「子ども」という境界領域から、理論・実践・対話を通して、
人間・社会・文化の生成過程および構造を探究する

お茶の水女子大学と子ども学

お茶の水女子大学は、1875(明治8)年東京女子師範学校として開学以来、女子教育、女性キャリア育成という課題を掲げ、女性研究者の育成と並行し、附属学校(幼稚園・小学校・高等女学校、戦後に中学校、高等学校)における児童・生徒の育成、そして女子教員の養成、養成方法の開発を進めてきました。キャンパスは、関東大震災を境に、湯島・お茶の水から現在の大塚に移りましたが、一つの敷地内に大学とすべての附属校園がすべて隣接してあるというのは国立大学の中でも唯一です。
附属校園の内でいち早く創設されたのは附属幼稚園(1876(明治9)年)で、日本で現存する最古の幼稚園です。そのほか、就学前の乳幼児が日々通う施設として、学内保育所いずみナーサリー(2005年-)、文京区とともに子育て支援の推進と幼児教育の質の向上をめざして開設した文京区立お茶の水女子大学こども園(2016年-)、という3つがあります。
戦前から戦後にかけて、半世紀間、日本の幼児教育研究、教育現場における実践理論をリードし改革をすすめた倉橋惣三は「日本のフレーベル」と呼ばれることもありますが、彼は東京女子高等師範学校教授や、附属幼稚園主事(園長)も長く務めました。
新制大学となったお茶の水女子大学には、倉橋の主唱で家政学部児童学科が創設され、「児童」という境界領域から、心理、教育、医学、福祉等の教授陣による学際的子ども研究と教育が行われ、先駆的な実績を重ね、今も卒業生は、教育現場や心理臨床や福祉現場における実践者、大学・短大の教員、子ども関連産業等において幅広く活躍しています。
1992(平成4)年、学部改組に伴い、児童学科は、生活科学部人間生活学科において臨床心理学と保育・児童学分野を一体化した発達臨床学講座(2004年から発達臨床心理学講座)となります。一人ひとりの生き方や生活に寄り添う臨床的な在り方と、子育てへの広い知識と視野をもつ人材の育成に重点を置き、附属幼稚園やナーサリー、こども園と連携をとり、フィールドワークやインターンシップ、相互的なアクティブラーニングを取り入れた、実践力ある保育者、臨床家になるための基礎的カリキュラムを実施してきました。また、現職者としてすでに社会で活躍している保育・教育関係者や親・社会人が大学という場所で新たに学びなおす社会人プログラムを提供し、学部生と社会人が共に学ぶ場の創出を図っています。
そして2018年度から、本学における心理、教育、社会、保育、臨床に関するコース・講座を再編し、人と出会い、生き方を支援する人材の育成を一層おし進め、大学がより社会に貢献する場となりうるよう、文教育学部の人間社会科学科に「子ども学コース」を、生活科学部に心理学科を創設しました。子ども学コースは、女子大の特性を生かしつつ、子どもや子育てをめぐる諸課題に対して鋭い感性と問題意識をもち、多様性を許容しながら社会の各方面で活躍できる人を育てたいと考えています。その一環で、文教育学部の幼稚園・小学校の教員養成課程および担当教員を再構成し、附属幼稚園やこども園等のフィールドにおける学びを取り入れながら、子どもと共に育つ保育者・教師の育成に力を入れていきます。
子どもの現実から目を離さず、社会の中で子どもが健やかに希望をもって育つことに肯定的な価値観を持てる人、そのために小さな何かができる人を育てることが目標です。

目的

「子どもから」人間・社会・文化の生成過程および構造を探究する

私たちの世界は多様な人々から構成されています。子どももまた世界の多様性を構成する要素の一つだと考えることができます。子どもたちはこの世界に登場し、様々な経験をして成長していきます。世界は新しく参入してきた子どもを育て・支え・教育するシステムを工夫して作り出してきましたが、私たちは今、次々に現れる課題に直面しています。
子ども学プログラムでは、子どもをとりまく多様な課題について考えます。ただ、子どもの課題に取り組もうとするとき、ともすれば目の前の課題に振り回されてしまうことはないでしょうか?目の前の問題に振り回されることなく子どもの課題に取り組むためには、少々遠回りに思われるかもしれませんが、幅広い知識を習得し多様な経験を重ねていくことが重要だと考えています。本プログラムでは、子どもを取り巻く課題を考えながら、その背後にある社会や文化の構造について、そして人間とは何かについて探求することを目的としています。

特徴

理論・実践・対話による多様な学び

子ども学プログラムでは、専門の基礎として、「子ども」や保育・幼児教育に関する理論を多様な専門領域の観点から多角的に学びます。誰もが経てきた「子ども」時代を相対化して捉えることにより、「子ども」を通して人間・社会・文化へと視野を広げていきます。また、同じキャンパス内に位置するナーサリー・こども園・幼稚園など子どもたちが生活する場に臨み、フィールドワークやインターンシップを通して「子ども」や子どもを取り巻く環境について実践的に学びます。
これらの学修で大切にしたいのは「対話」です。学生/教員/子ども/保育者/自己など、それぞれの間でなされる対話の積み重ねは、学びの深化をもたらすはずです。1年次より学問的対話を大切にしながら自身の問題関心を深め、4年間の集大成としての卒業論文につなげていきます。
本プログラムでは、幼稚園教職課程の科目も展開しています。

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