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阿部 尚史(あべ なおふみ:西アジア史)

2023年6月15日更新

阿部ゼミのみなさん

研究テーマ

西アジアの歴史を、とくにイランに注目しながら、現在のところは以下の主題にかんして研究しています。家族、女性、イスラーム法と司法制度、聖廟の財産保全、権力と文学、少数派アルメニア教徒、などです。西アジアの歴史研究の中で、どちらかというと見過ごされてきた、家族関係について主として研究を進めています。
これまで家産の保全にイスラーム法と家族成員の人間関係がいかに関係していたのか、そこにおける女性の役割はどのようなものだったのかに重点を置いて研究してきました。イスラーム法文書や書翰などの種類が異なる史料を深く読み込んで、食い違いをうまく見つけ出し、その背景を考えると、生々しい人間関係や打算に満ちた駆け引きが浮かび上がらせることができます。手間がかかりますが、非常にやりがいのある仕事です。
最近は、19世紀後半にイランで作成された初期的な人口統計資料も用いながら、一夫多妻の割合、子女の男女比や住民の社会経済的な背景など、地域住民にかかわる数量的な分析も試みています。アラブやトルコ、中央アジアとの比較に加えて、日本やヨーロッパ、インド、中国などの家族制度・婚姻制度とどのように異なり、またいかなる類似点があるのか常に意識しながら、研究を進めていきたいと考えています。
このほか、18世紀以降社会的に重要性が低減したムスリム聖者廟の存続の試みや、19世紀のイラン政権とアルメニア教徒との関係についても研究しています。

学生への一言

大学院生時代にイランに留学したのですが、帰ってきてからしばらく研究がまとめられずにひどく困っていた時期がありました。その時に、とにかく研究と向き合うと同時に研究計画を大幅に変更しました。そしてその後何とか軌道に乗せることができました。
後になってみると、「あきらめないこと」と「柔軟に変更すること」の両方が肝心なのだと気づかされました。見ようによっては相反するようにも思える二つの選択ですが、おそらく研究だけでなくいろいろな場面でそういうことになるのだと思います。学生の皆さんも困難に直面した時には、柔軟さとしぶとさの両方をうまく使いこなして、めげずに頑張ってほしいと思います。

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