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2026年7月15日更新
平山茜さんから国立台北芸術大学(TNUA)交換留学の終了報告が届きました
(2026年7月15日)
台湾の国立台北芸術大学への留学を終えて帰国した平山茜さんの報告(後半)を掲載します。平山さんは、舞踊教育学コース卒業後、大学院(修士課程)に進学し、台湾の国立台北芸術大学に2025年9月から2026年6月までの約1年間、交換留学生として留学されました。2026年3月掲載の中間報告と併せてお読みいただけると幸いです。大変充実した留学生活であったことが伝わってきます。
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平山茜 舞踊・表現行動学コース博士前期課程2年
台北芸術大学舞踊学院 交換留学記録 2026年春学期
私は、台湾の国立台北芸術大学(通称:北芸大/TNUA)舞踊学院に修士課程の学生として2025年9月から2026年6月まで交換留学をしました。 中間報告に引き続き、今回は春学期(2月~6月)の活動を報告します。中国語と英語はカタコトながらも少しずつ進歩し、学生や先生方との交流が広がっていき、パフォーマンスの協働創作や出演などに精力的に取り組むことができました。
【舞踊学院の集大成「年度展」の舞台に参加】
2026年5月に開催された初夏年度展演「大鳴」に出演しました。本公演は通称「年度展」と呼ばれる舞踊学院の恒例行事であり、大学の劇場を使用して4日間・全5公演にわたり開催されます。公演の約1か月前からは劇場で定期的な舞台リハーサルが始まり、本番前の1週間は集中期間として、リハーサルや本番に専念できる体制が整えられています。ウォームアップや照明合わせ、舞台写真撮影なども含めて1週間の綿密なスケジュールが組まれており、公演を支えるバックアップ体制が、長年にわたり先生方によって整備・構築されてきたことが分かりました。
毎年5月公演では、学部1・2・3年生と大学院生の4グループが、それぞれプロの振付家による約20分の作品を踊り、計4作品が発表されます。今年度は、日本からゲスト講師として田村一行先生を迎え、大学院生に向けた舞踏作品『幽玄のトポロジー』の創作が行われました。私は週2回の舞踏実技の授業に加え、週2回夜に行われる作品リハーサルに参加し、台湾の学生たちとともに練習に励みました。稽古では、「幽玄とはどのようなものか」といった問いを他の出演者から受けるなどして、舞踏や日本特有の概念について対話を重ねることもありました。また、田村先生の気さくで、舞踏そのものに真摯に向き合う姿勢は、学生に自然と伝播していたと感じます。
今年度は、舞踏作品のほかに、ネオ・クラシックバレエ作品や、雲門舞集創設者・林懐民による代表作品、さらに雲門舞集の元ダンサーによる新作などが上演され、彩り豊かなプログラムが構成されていました。チケットは公演の約2週間前にはほぼ完売しており、学内外から注目を集めていることがうかがえました。
本番前の1週間は、連日の舞台リハーサルにより体力的に厳しい期間でしたが、体調や身体の状態を調整し、いかに安定したパフォーマンスを維持するかを学びました。こうした充実したバックアップ体制のもとで、ダンサーとして舞台に集中できる環境は大変貴重であると感じます。また、学生たちは4年間にわたって舞台経験を積み重ねることで、プロとして求められる体力やコンディショニング、本番への向き合い方を身に付けていくのだと実感しました。
【専門領域と年代を跨ぎ、身体表現を学ぶ】
今学期は、舞踊専攻の学生を対象とした授業だけでなく、どの専攻の学生も受講可能な全学部開放授業を3科目受講し、多角的に身体表現を学びました。
一つ目に、演劇学院の授業を履修しました。授業は、シアターゲーム(ウォームアップや演技力向上のために考案された、身体や言葉を用いたエクササイズ)を中心に、初心者にも易しく進められ、動作や発声に慣れていきました。中間・期末発表では、各自が小作品を創作、発表し、先生から講評を受けました。私にとって、発声や間の取り方によって感情・役柄を表現する方法を学べ、作品創作では言語をパフォーマンスにどのように効果的に取り入れるかという新たな観点から考える機会となりました。受講生の多くは演劇専攻ではないため、文学専攻の学生は巧みに台本を書いたり、声楽専攻の学生は豊かな声色で演じ分けたり、美術専攻の学生は手製の小道具を用いるなど、各専門分野を起点・強みとした創作方法から、互いにインスピレーションを受けました。
二つ目に、コンタクト・インプロビゼーションの集中講義は、休日の5日間、午前10時から午後5時頃に行われました。教師が爽やかな雰囲気で授業をファシリテーションし、昼休みには学生が集まってランチを共にしたり、各自で振り返りや休息の時間を過ごしたりと、皆が自然体で和やかでした。実践は、自分の身体と床との接触を意識することから始まり、床を転がる、身体を手で支えるといった基礎的なワークを通して、床に身体を委ねることへの恐怖心を和らげ、徐々にペアワークへと移行していきました。ダイナミックな動作を目指すというより、相手の骨格や呼吸、ペースを繊細に感じ取り、互いの動きを調和させることが重視されていました。ディスカッションの時間も重視され、身体感覚や自身のバックグラウンドに基づく発見を交わすことで、人となりを互いに理解し合いました。身体と言語の両側面から心地よいコミュニケーションを図ろうとすることで、自己・他者理解を深められるのだと学びました。
三つ目に、「梨園戲(リーユエンシー)」という伝統演劇の授業を受講し、演劇に用いられる「南管」という伝統楽器とともに、歌と踊りを覚えました。授業は台北の下町・迪化街で行われ、地元の劇団員と台北芸術大学の学生がともに学びました。梨園戲では、日常的な動作がゆったりと繊細に様式化されており、その所作には日本の芸能とも通じる情緒を感じました。期末には、老舗の茶館で成果発表を行いました。観覧席には劇団に携わってきたさまざまな年代の方々がおり、発表後には感想を交わし合う時間がありました。この伝統芸能を継承してきた世代と、今まさに学んでいる私たちの世代が、一人ずつ想いを述べ、次第に一つに編まれていくような感覚を覚えました。日常と芸能が地続きにあり、技の継承と習得を通じて、共同体がこの地に形成されてきたのだなと体感しました。
以上の授業を通して、専門領域や年代を越えた人々との関わりの中で、視点を変えながら身体表現を学び深める機会となりました。
【縦に伝統を学び、横の繋がりで新たな表現をつくる】
1年間を通して、多くの先生方や学生と出会い、その考え方や創作に触れることができました。台湾では、多様なエスニシティを背景にもつ人々が共存し、それぞれの伝統を大切に育みながら、現在の表現へと発展させようとする姿勢があると感じます。この舞踊学院でも、学生は武術や伝統演劇、原住民の楽舞などの伝統芸能を学びながら、西洋由来のバレエやモダンダンスも基礎技能として身に付け、「年度展」では、それら多様な身体訓練の成果が複合的に表れていました。
先生方がしばしば「東洋の身体」という言葉を口にされていたことは印象的でした。西洋を中心に発展してきた舞台芸術を模倣するだけではなく、東洋に生きる私たちの身体性とは何かを問い、自らの伝統文化を起点として新たな表現を創造しようとしていました。その視点は私にとって新鮮で、日本人としての文化的ルーツに立ち返り、自分自身をどのように語るのかを考えるきっかけとなりました。
また、この大学には、専門領域を越えた協働制作を通して、新たな表現形式に挑戦できる環境があります。私自身も、音楽学部の演奏・作曲専攻の学生やフランスの音楽アーティストとの創作、ニューメディアアート専攻の大学院生とのパフォーマンス創作などのコラボレーションに取り組みました。その中で、日本では慎重に議論を重ね、合意形成を経て創作を進めることが多かった自分に気づかされました。台湾では未完成な試みも寛容に受け止められ、今あるリソースを生かし、遠慮なく提案し、試しながら形にしていく姿勢も大切なのだと気づきました。
台北芸術大学での留学を通じて、縦軸として伝統を学び、横軸として人とのつながりから新たな表現を編み出すことを経験しました。この一年間で得た学びと出会いは、今後の研究と創作活動の大きな糧となると感じています。このような貴重な機会を与えてくださったすべての方々に、心より感謝申し上げます。
年度展リハーサル
田村一行先生振付『幽玄のトポロジー』
楽屋にて
集合写真
梨園戲の授業
梨園戲 茶館での成果発表会
ニューメディアアート専攻の学生との協働制作
音楽専攻の学生とフランスのアーティストとの協働制作
大学展覧会の開幕式に出演
舞踏の授業内で茶道体験会を開かせていただく