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2025年5月20日更新
グロ文生と鴨志田氏
講演後の懇談会にて今年度初のグロ文特別講演会では、長年パレスチナ問題にも強い関心を持って取材を続けられているNHK解説委員の鴨志田郷(かもしだ・ごう)氏を招へいし、ガザの惨状について語っていただきました。
今回の講演会で最も印象に残ったのは、双方の話を「分け隔てなく聞く」ことの大切さと、「答えを提示するのではなく、市民に考えてもらうことが仕事」という鴨志田さんのご発言です。私自身、普段からパレスチナへの連帯を表明して活動している立場の人間として、最初は鴨志田さんの姿勢が日和見主義的なのではないかと愚考しました。しかしお話を伺う中で、相手方の歴史を学んで話を現場で聞いてみないとその内実を知ることはできない、ということがだんだん感じられるようになりました。また「勧善懲悪をしてはいけない」とおっしゃっていたことも心に残りました。物事はわかりやすいストーリー仕立てなのではなくて、たくさんの苦しみや悲しみや葛藤がある、複雑な構造であることをまず理解する必要があり、それをきちんと理解したら単純な勧善懲悪はできないだろうと想像できました。勧善懲悪の姿勢をとるなら、加害側と真に向き合うことはできませんが、根本的な問題解決のためにも相互理解は絶対に必要で、そのためには加害者の側にこそ向き合う必要があるということも、子どもを亡くした親同士が最も対話の可能性があるというお話を伺って感じられました。
振り返って日本のことを考えてみると、日本社会全体としては過去の戦争の反省も薄れてきていると同時に、個人としては、国際社会・日本社会の一員であるという責任の自覚もあまり芽生えていないのかなという気がします。欧米に追従するだけではないという姿勢を示すことが必要だとおっしゃっていましたが、日本は本当にその責任をしっかりと自覚する必要があると思いました。そしてそれは政府だけが行えばいいことではなくて、個人も社会の一員としての政治的責任を自覚して参画していく必要があると考えました。報道に関わるお立場として、「考えてもらう材料を市民に提示すること」が仕事だとおっしゃっていましたが、市民の側もその材料を正しく受け取る能力と責任が求められていると思いました。
お話を通じて、私自身の物事に向き合う姿勢を再検討することができたとともに、市民ひとりひとりに託されている責任の重さも改めて自覚することができました。大変興味深い講演をありがとうございました。