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大薮 海(おおやぶ うみ:日本中世史)

2023年6月15日更新

大薮ゼミのみなさん

研究テーマ

 日本中世の政治史、とくに室町時代の支配体制に関心を持って研究しています。
 中世は、はっきりいって捉えどころがない時代です。大まかな枠組みさえも研究者によって見方が異なります。たとえば、古代は奈良や京都に朝廷があり、地方の政治は朝廷から派遣された国司が担当していました。近世は江戸に幕府があり、地方は各藩の藩主たちが治めていました。しかし、中世についてはそのようなわかりやすい図式を描くことがとても難しいのです。
 中世にも朝廷や幕府はありましたが、古代や近世とは全く異なる形で存在していました。しかも中世後期の室町時代になると、朝廷と幕府が京都に並存し、ますますややこしくなります。本当にわからない。わからないけれど、そこを紐解いていく楽しみが、中世史研究にはあります。
 枠組みだけでなく、身分や集団の境界も曖昧です。私が研究対象として取り上げることが多い北畠(きたばたけ)氏は、その最たる例です。北畠氏は、京都で生活する、由緒ある家柄の公家でした。ところが、中世のある時期から武力を持ち始め、戦国時代に織田信長に滅ぼされるまでの200年間以上、伊勢国(現在の三重県)の一部を支配していました。このような北畠氏は、公家でしょうか?武士でしょうか?北畠氏ほどではないにしても、私たちが抱きがちな公家や武士のイメージに当てはまらない存在が数多くみられるのも、中世の特徴です。彼らの体制内における位置付け・役割についても、明らかにしたいと思っています。
 また最近では、応仁・文明の乱を中心とした中央の政治史にも興味を持っています。中央と地方のいずれにも軸足を置きながら、室町時代のしくみを解明したいと考えています。

ゼミ概要

著作 

学生への一言

 「歴史は覚えることが多い」と思い込みがちです。しかし、ある一つの証拠や疑問を出発点として、あらゆる可能性を模索しながらさらに証拠を集めて推理し、一つの論を組み立てていく―歴史研究に必要なのは論理的思考力であり、知識ではありません。もしわからないこと・知らないことが出てきたならば、その場で調べればよいのです(もちろん、知識があればなお良いのですが)。あと必要なのは、不思議に思う気持ちと好奇心。ありのままを受け入れるのではなく、「なぜどうしてそうなったのか?」と考えることを常に意識してください。

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