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訪問団報告(三浦徹)


 午前中のジェンダー研究センターでのミーティングでは、訪問団から女性の社会進出にまつわる問題について活発な質問がでた。午後の、附属高校授業参観では、家庭科や体育や化学の実習に訪問団の方々が加わり、あっという間に生徒にとけ込み、なによりも生徒がとても喜んでいた。教頭へは、受験や非行について、ホットな質問がだされました。昼食後には、短時間でしたが、大学を代表して本田和子学長が面会し、アラブ・イスラム諸国の女性との交流への期待を述べ、記念品として扇子を贈り、訪問団の方々からは人形などの贈り物が手渡されました。

 意見交換会は、100名近い参加があり、文教育1号館大会議室が埋まりました。当初予定していた質問票の分類(教育、労働、結婚・離婚、家事など)にそって、交替で答えていただきました。時間節約のため、英語で回答してもらうつもりでしたが、高校生や学部1-2年生が多く首を傾げていたので、アラビア語で回答し、通訳してもらう形に切り替えました。参加者のアンケートによれば、アラブ女性が、きわめて知的で活発でステキで、自分たちの文化に自信をもっている、イメージが塗り替えられるよい機会であった、という答えが多く、全体は好評のようでした。もっとも、ヴェールをかぶったアラブ・ムスリムはpassiveという固定イメージがあってのことでしょう。また、院生の方からは、訪問団の女性は社会のエリートだ、彼女たちを基準にアラブ女性を測ることは、二重にアラブ一般民衆の女性を消し去ることになる、という批判的意見もありました。

 外務省の好意で、晩の送別パーティー(赤坂プリンスホテル)に学生・院生も呼んでくれたので、意見交換会の参加者約10名が参加し、訪問団の女性を取り囲んで質問攻めにしていました。この積極性には、正直驚きました。学期末のレポートは、2-4人のグループを組ませ、具体的にムスリム女性の生涯や活動についての情報を集め、そこにみられるジェンダー問題について、議論せよ、という課題を出したので、その情報集めでもありました。
 あらためて思うことは、日本の若い世代に「西洋的な」フェミニズム意識(男女平等論)が強まるにつれて、逆に、アラブ・イスラム世界など、第三世界の女性に対し「遅れている」という批判・固定イメージが強まっているのではないかということです。私の母の世代のほうが、むしろ、等位の視線でみているような気がします。このような印象を訪問団の女性に伝えたら、「え、なんでだ、とんでもない」との顔をされました。

 訪問団の受入について、ご協力をいただいたジェンダー研究センターの伊藤るり、館かおる先生、附属高校の高橋通泰副校長と荻原万紀子先生、写真・ビデオ撮影をしてくださった企画広報室のスタッフ、意見交換会の運営を手伝ってくれたイスラム史ゼミの学生と院生、このような機会を下さった外務省中近東2課、とりわけ担当の井上隼一さんとアラビア語通訳の方に、この場を借りて御礼を申し上げます。

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