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2020年8月18日更新
舞踊は、その社会文化的背景と深く結びついた表現様式をもっています。現地調査(フィールドワーク)や実技実習により、自身の身体を通して舞踊の動きが持つ意味や社会の中で果たす役割について考え、文化という視点から舞踊を研究していきます。
私が研究対象としているのは、東南アジア地域の舞踊ですが、特に非西欧地域を対象にした学問分野というわけではありません。民族舞踊学を方法論としてとらえれば、西欧のクラシックバレエも文化とのかかわり方という視点から研究するならば、研究対象にもなり得るわけです。
8ミリフィルムやビデオカメラなどの科学技術がなかった時代には、舞踊のフィールドワークにおいて、身体運動を記録する手段は、絵や言葉あるいは記号による記述しかありませんでした。西洋音楽の五線譜は音楽の記譜法として普及していますが、舞踊にも、それほど普及していないとはいえ様々な記譜法があり、かなり精緻な身体運動を記譜できるものもあります。
私は、Labanotation(ラバノテーション)という記譜法を用いて舞踊の分析をしたり、情報工学の研究者らと共同で、コンピュータの内部表現としての身体運動の記譜法を考案する研究や、モーションキャプチャを用いて民族舞踊の身体表現の「わざ」を分析するという研究もしています。
2年生必修の講義科目です。インドネシア・バリ島の舞踊を中心にアジア地域の舞踊、日本の伝統芸能と民俗芸能、東欧のフォークダンスなど、舞踊を学ぶ者の教養として知っておいて欲しいものを幅広く扱います。実際の映像資料を見ながら、舞踊のシステムや見方について学びます。舞踊教育学コースの学生は、バレエやモダンダンスなど劇場舞踊に触れる機会は多いようですが、劇場以外の場所で行われる舞踊があり、それがどのような社会的機能を果たしているのかといったことにも、これを機会に関心を持ってほしいと思います。また、将来民族舞踊学を専攻しないとしても、それらの知識を得ることによって、舞踊の表現者としての創作の幅が広がることを期待しています。
3年生の選択必修科目です。舞踊のフィールドワークの方法論について学びます。フィールドワークに基づいて書かれた舞踊学の論文を読んだり、フィールドワークのあり方について書かれた文章を読んだりして、ディスカッションを行います。また、実際に、各自で調査計画書を作成し、フィールド調査を行ってもらいます。実践的な演習なので、卒論でフィールド調査を行おうと考えている学生向きです。
1年生の必修実技科目です。中村が、実技に関しても研鑽を積んでいる、インドネシア・バリ島の女性舞踊の実技授業です。サロン(腰布)を巻いて踊ります。ずっと中腰の姿勢を保って踊りますので、ゆるやかな見た目の動きと異なって、身体的にもきついということを体感するとともに、身体の中央部にエネルギーを集中させるという、バレエやモダンダンスとは異なる身体表現を習得します。
この科目は、博士前期課程の舞踊・表現行動学コース学生を主対象として開講しています。日本の民俗芸能や、世界各地の民族舞踊の芸態や表現について映像や文献資料を用いて整理・分析し、舞踊の表現特性についての理解を深めます。
卒業論文でフィールド調査による舞踊研究をしたいと考えている人は、まず、研究対象(調査対象)の舞踊(芸能)を早い時期に決めることが肝要です。できれば、3年生までのうちに、「これを調べてみたい」というものに出会ってほしいです。それが決まったら、それについてどのような研究が既に行われているのか、先行研究を調べましょう。人がすでにやっているのと同じことをやっても意味がありませんので、自分がそれを対象にして何をどのような切り口で研究するか、またどのようにオリジナルな部分を出していくかを考えます。民族舞踊学(舞踊人類学)の論文は少ないと思いますので、関連するテーマの文化人類学や民俗学などの論文も読みましょう。
Judith Lynne Hanna, To Dance Is Human: A Theory of Nonverbal Communication, Univ of Chicago Pr (Sd),1987
Drid Williams, Anthropology and the Dance: Ten Lectures, Univ of Illinois Press (2nd ed), 2004
Hutchinson, Ann :Gust CHOREO-GRAPHICS- A Comparison of Dance Notation System From the Fifteenth Century to the Present, Gordon and Breach, New York, 1989