「IT時代におけるくらしと社会に関する調査」(3モード比較調査)
2013年4月から2016年3月まで,文部科学省と日本学術振興会の科学研究費補助金事業として,基盤研究(B)(一般)「ICT支援による社会調査の信頼性と応用性の向上を目指した方法論的研究」(課題番号25285147)の研究代表者をつとめていました。
この調査研究プロジェクトの一環として,2014年度には,「IT時代におけるくらしと社会に関する調査」を実施しました(調査期間:2014年10月〜12月)。調査研究組織の名称は,「社会調査法研究会」といたしました。調査に御協力を戴いた皆様には心より御礼を申し上げます。
調査の実施は,日本の代表的調査専門組織の一つである,株式会社 日本リサーチセンターに委託しました。
調査主旨説明書: 調査協力のお願いを受け取られた方はこの説明書・Q&Aもお読み下さい。
この調査の実施に関しては,お茶の水女子大学の
人文社会科学研究の倫理審査委員会に倫理審査申請を行い,調査倫理上問題がないことの承認を受けました。
調査研究組織
社会調査法研究会(調査企画)
研究代表者:杉野 勇(お茶の水女子大学 准教授)
[著書,論文]

一般社団法人社会調査協会編, 2014, 『社会調査事典』丸善.(編集協力・項目執筆)

新睦人・盛山和夫編, 2008, 『社会調査ゼミナール』有斐閣.(分担執筆)

松村良之・村山眞維編, 2010, 『現代日本の紛争処理と民事司法1 法意識と紛争行動』東京大学出版会.(分担執筆)
研究分担者:轟 亮(金沢大学 教授)
[著書,論文]

轟亮・杉野勇編, [2010]2013, 『入門・社会調査法――2ステップで基礎から学ぶ』〔第2版〕法律文化社.

斎藤友里子・三隅一人編, 2011, 『現代の社会階層3 流動化の中の社会意識』東京大学出版会.(分担執筆)

轟亮・歸山亜紀, 2014, 「予備調査としてのインターネット調査の可能性」『社会と調査』12: 46-61.
平沢 和司(北海道大学 教授)
[著書,論文]

平沢和司, 2014, 『格差の社会学入門――学歴と階層から考える』北海道大学出版会.

石田浩・近藤博之・中尾啓子編, 2011, 『現代の階層社会2 階層と移動の構造』東京大学出版会.(分担執筆)

岩井八郎・近藤博之編, 2010, 『現代教育社会学』有斐閣.(分担執筆)
俵 希實(北陸学院大学 教授)
[著書,論文]

俵希實・轟亮, 2009, 「オーストラリアにおける社会調査の実施状況――今後の社会調査法を展望するために」『理論と方法』46: 333-343.

俵希實・田邊浩・轟亮, 2008, 「個人情報保護に対応する社会調査の技法――全国自治体調査から」『社会と調査』1: 84-88.

俵希實, 2009, 「地方都市における多文化共生社会の実現の可能性――金沢市民のコミュニティに関する意識・行動調査から」『社会環境研究』17: 83-95.
小林 大祐(金沢大学 准教授)
[著書,論文]

小林大祐, 2015, 「階層帰属意識における調査員効果について――個別面接法と郵送法の比較から」『社会学評論』66(1): 19-38.

小林大祐, 2011, 「『フリーター』のタイプと出身階層」『理論と方法』26(2): 287-302.

小林大祐, 2004, 「階層帰属意識に対する地域特性の効果――準拠集団か認識空間か」『社会学評論』55(3): 348-366.
荒牧 草平(九州大学 准教授)
[著書,論文]

佐藤嘉倫・尾嶋史章編, 2011, 『現代の階層社会1 格差と多様性』東京大学出版会.(分担執筆)

荒牧草平, 2013, 「教育達成に対する『家族』効果の再検討――祖父母・オジオバと家族制度に着目して」『季刊 家計経済研究』97: 33-41.

荒牧草平, 2012, 「孫の教育達成に対する祖父母学歴の効果――父方母方の別と孫の性別・出生順位に着目して」『家族社会学研究』24(1): 84-94.
研究成果発表
6th Conference of ESRA, Reykjavik, Iceland, July 13-17, 2015
第88回日本社会学会大会,早稲田大学, September 19-20, 2015
調査の目的
本研究調査は、仕事・職業あるいは社会階層と、選挙や政治をはじめとする多様な生活領域に関する社会意識の関係を把握することを内容的な目的としております。上に氏名を挙げております調査研究組織には,社会階層研究と並んで家族社会学や教育社会学を専門とする研究分担者を複数含んでおり,例えば選挙や政治,或はメディア・コンピュータ利用行動などと種々の社会意識の関係について複数の観点の組み合わせから分析を行うことが出来ます。
また、調査方法に関して、今後の社会調査の有力な実施方法であると思われるCAPIとCASI、そしてPAPIの特徴や信頼性を、方法間(データ収集モード間)の比較によって明らかにすることを方法論的な目的としています。
〔...CAPI, CASI, PAPIとは?〕
CAPI(Computer-Assisted Personal Interviewing)とは,訪問調査員がコンピュータ機器を操作しながら対象者の方に質問をして回答を記録している手法であり,紙の調査票に記入する手法に比べて種々のミスを防ぎ,集計を大幅に効率化することが出来ます。
CASI(Computer-Assisted Self-Interviewing)とは,対象者の方自らがコンピュータ機器を操作して画面上の質問に直接回答していく手法であり,回答内容を調査員にも知られないという長所があります。
他に,コンピュータと電話を利用するCATI(Computer-Assisted Telephone Interviewing),ブラウザ等を用いてインターネット経由で回答するCAWI(Computer-Assisted Web Interviewing)などもあります。
それらCAI(Computer-Assisted Interviewing)に対して,従来型の紙の調査票に回答を記入していく手法は現在ではPAPI(Paper And Pencil Interviewing)と呼ばれるようになりました。
対象者の選び方
この調査は,中規模の社会調査として企画しており,東京・千葉・埼玉・神奈川の1都3県,30歳から59歳までの日本人男性・女性1,080名を対象としてします。調査をお願いする方は,二段階の無作為抽出という方法で選ばせていただいています(正確には「層化二段無作為抽出」といいます)。この方法は科学的な社会調査における標準的な方法であり,まずは地点を「くじ引き」に似た方法で全く偶然に(無作為に,ランダムに)選びます。そして選ばれた地点の中で個人を再び全く偶然に(無作為に)選びます。
〔...詳しく読む〕
今回の調査ではまず一都三県から20地点を無作為に選びます。そしてその選ばれた20地点について,選挙や政治などについての質問もさせて戴く為,各地点を担当する選挙管理委員会に選挙人名簿の閲覧申請をします。申請が認められたら各選挙管理委員会にて,各地点から54名の方を無作為に選ばせて戴きます。
完全に無作為に選ぶという事は,「実際に誰が選ばれるかは全く偶然による」という事を意味します。「誰が選ばれるかは事前には全く分からない」のですが,これは「(選ばれた人ではなくても)誰が回答してもいい」という事では決してありません。厳密に科学的・統計学的な推論を行う為には,必ず「選ばれた人自身に回答して貰う」ことがどうしても必要なのです。「事前には誰になるか分からないが,一旦選ばれた後ではその人でなければならない」というのが大原則なのです。少しわかりにくいのですが,科学的に信頼に足る(言い換えれば決して捏造や誘導ではない)調査を実施する為に必要な条件なのだと御理解下さい。
調査の概要
実際に対象者の方をお尋ねする時期(実査期間)は2014年10月〜12月です。初めにお葉書で調査協力の依頼状をお出しした後に,日本リサーチセンターの専門調査員が直接お宅をお伺いします。その際に改めて,御説明と御協力のお願いを致します。
〔...詳しく読む〕
御承諾を戴けましたら,上記の目的に従って,人々の暮らしや仕事,ICT活用状況,社会的・政治的意識,生活状況などについて質問をさせて戴きます。時間は人によって異なりますが,30分〜45分程度を見込んでいます。また,一見無関係に見える様々な質問が含まれているとお感じになられる方もいらっしゃるかも知れませんが,社会移動研究,家族研究,教育社会学的研究など幾つかの観点から研究を行う為ですので何卒御了承下さい。
また,今回の調査は調査方法論的な検討も目的の一つとしており,従来の社会調査のように紙の調査票を用いて行う人と,調査員主導でタブレットを用いて行う人,対象者の方御自身がタブレットを用いて回答する人の3通りがあります。どの方法を用いるかは申し訳ありませんがこちらで決めさせて戴きます。「タブレットが好きだからタブレットを,機械は苦手だから紙の調査票を」としてしまうと,今回の目的である方法論的な検討が不可能になってしまいます。機械の苦手な人にタブレットでの回答をお願いする事もありますが,信頼に足る調査方法の発展の為に御了解・御協力をお願い申し上げます。