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新井 由紀夫(あらい ゆきお:ヨーロッパ中世史)

2023年6月15日更新

新井先生ゼミのみなさん 

研究テーマ

人間、生きていればかならず出くわすものが、きずなやしがらみといった、人と人とをとり結ぶ社会的な関係の問題です。ただしその具体的なあり方は、地域や時代、人の置かれた状況により、さまざまに異なった姿となってあらわれてきます。もし自分が、中世後期のイギリスに生きていて、家屋敷と所領をもつジェントリだったとしたら、どんなきずなとしがらみの関係のなかで暮らしていたのだろう?そんな疑問を研究のテーマとしています。例えば、

  • 結婚するときには、どんな条件が決め手になっているのだろうか・・・
  • 遠くの親類と、近くの友人と、どちらを大切にしていたのだろうか・・・
  • いざというとき、頼れるような人をどのようにして見つけていたのか・・・
  • 宗教上の結びつきは、当時生きてゆく上で必要なものだったのだろうか・・・
  • 実力者とのおつきあいは、たとえやっかいでもどこまでしなければならないのか・・・

これらの答えを探して史料を調べてゆくうちに、彼らが生きていた中世社会の特徴が見えてくるのではないかといま考えています。『ジェントリから見た中世後期イギリス社会』(刀水書房)はその成果をまとめたものです。 最近は、手紙史料から何がいえるのかを考えること、贖宥状(祈祷兄弟盟約状)を使って宗教と現実のないまざった社会的関係を調べること、家政会計記録から何が読み解けるのか(山川出版社の世界史リブレット『中世のジェントリと社会』という本になりました) 、また中世都市社会としてのロンドンなどに関心を持っています。ロンドンのお墓事情について論文を書いたところです(「忘れられた墓の記憶 - ロンドン・グレイフライアーズに墓所を定めること」春田・新井・David Roffe編『歴史的世界へのアプローチ』刀水書房所収)。

学生への一言

なにごとにも好奇心を持ち、どんなことでもどん欲に楽しむという姿勢は、歴史学をやる上であんがい欠かせない要素だと思います。遊びや楽しみのなかから学問のヒントを得ることもあります。学生さん達との学科旅行での宴席で、比較社会史という授業のテーマ「ホモセクシュアルの比較社会史」が決まったのですが、やってみると奥が深く、史学の先生達との共同研究テーマにまで発展してしまったほどです。今も、「歴史社会におけるリスクとコミュニケーション」「身分と身分感覚」など、いくつかの共同研究を実施しました。
歴史学で扱えないようなテーマはない、何でもありだと最近よく思います。歴史学をやる上でこうしなければだめだということもありません。例えばきちんとした性格でなくとも大丈夫です。数年前まで研究会や院ゼミは私の研究室でやっていましたが、乱雑な資料や本の山をかき分けて、各自、自分のノートやメモを取れる空間を作ることからゼミは始まりました。あまりの乱雑さにたまりかねて、「先生、片付けましょう」と言い出してくれた学生さんにより一時見違えるように研究室はきれいになりました。でも最近は人数が多くてゼミを研究室でやれないのが残念です。性格が変わったわけではありませんから、また研究室は元の乱雑さに戻りつつありましたが、今年研究室の仮移転を機に断捨離して今は快適です。

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