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湯川 文彦(ゆかわ ふみひこ)

2023年6月15日更新

湯川先生ゼミ風景

研究テーマ

“明治維新”の性質について、その時代を生きた人々の様々な視点から研究しています。
時代の転換期に直面した人々は、これまでの国家・社会に対する認識や政治・生活・文化に対する価値観など、あらゆる面で揺さぶられました。彼ら彼女らが発した問いや抱えた葛藤、下した決断は、互いに引き合って大きなうねりとなり、“明治維新” を形づくっています。
なぜ「議会」を開くのか、なぜ「学校」に通うのか、公平な「税」とはなにか、公正な「裁判」とはなにか、どうすれば「法律」は守られるのか、どうすれば「会社」は継続するのか、「条約」とはなにか、「自治」とはなにか、「伝統」とはなにか――数限りない問いは、実は今我々が生活するなかで当たり前になってしまった「近代」のあらゆる側面に向けられていて、決まった答えが用意されているわけではありません。今我々が当たり前だと感じているもの一つ一つが、実際にはこうした問い、議論、選択の積み重ねによって作り出されたものなのです。彼ら彼女らの視点に立ってともに考えれば、我々にとっても現代社会の物事を根本から考え直す機会になるでしょう。
これまでは明治前期に主に外交、司法、法制、議会、教育、警察などの領域で活動した人物の視点から、その認識と活動を分析してきました。たとえば、日本近代法制史上はじめて「自治」の概念を導入した松田道之は、自らの地方官経験と欧米法の知識を合わせて、土地・人民の利益を原理とする地方制度を構想し、人民の自主運営能力の必要性を強調しました。あるいは、国民の社会的差別を超越して共通の教育を受けさせる仕組み=「普通教育」を導入した田中不二麿は、欧米諸国の視察・研究を経て、身分制解体後の日本を形成する方策として「普通教育」の重要性を訴えました。国内外を横断する彼らの議論は、当時の国際関係と変わりゆく日本社会の現実に対応したものでした。
現在は、より広く地方行政の担い手や知識人、一般の人々の価値観や活動のうねりに迫るべく、地方史料・メディア史料・個人史料などを駆使した研究を展開しています。並行して、戦後・現代の社会変革に関する研究・授業も行っています。 変革の時代により良く生きたいと願った人々の感性や活力は、時を超えて現代を生きる我々にも響くものがあると思います。

・ゼミ概要・卒業論文のテーマ

・著作

学生への一言

歴史について知り考えることは、現在の生活・社会・自分自身のことを外から見る視点を得るということでもあります。我々は現在について知っているようで、よく知りません。過去について知っていることよりも、知らないことの方がはるかに多いです。現在と過去に二つの視点をもつことができれば、自分自身の考え方をより広い視野で理解し、深めることも可能になります。
最初からはっきりした問題関心が定まっていなくても大丈夫です。史資料の検討や周りの方との議論を通じて、自分の問題関心を育てていくことができます。過去の人々の思いや活動に接し、研究者の分析法や見解に刺激を受けながら、同世代のゼミ参加者とも議論を重ねれば、自ずと自分が何に関心をもっているのか鮮明になっていくと思います。最初から自分の関心を決めつけたり、狭めてしまったりしないで、史資料や周りの人たちから刺激を受けて、自分自身の関心を理解し、育てていって頂ければ幸いです。

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