
ここしばらくは「植民地なき国の植民地主義」とナチズムの問題を関連させながら講義をしてきました。植民地に注目することで、16世紀から20世紀にいたる時代を大きくつかむことができます。また、他者とのかかわりで形成される、種主義、ナショナル・アイデンティティ、さらにはジェンダーの問題などもみえてきます。世界史を受験科目としなかった人たちにも、おもしろくて、興味がもてるような講義をするのはたいへんですが、思わぬ質問が歴史をとらえなおすヒントになるので、やりがいがあります。

ゼミでは、自分で問題をたて、材料を集め、分析し、他人にわかるようにまとめ、表現することを、西洋史というフィールドの特殊性をふくめて勉強します。解答
はひとつだけでないこと、ものごとにはいろいろな見方があることを知る場でもあります。そのためには参加者のやる気とサーヴィス精神、人とはちがったもの
の見方が重要になります。
通常、前期のゼミは、英語文献を中心とした外国語文献の講読というスタイルをとっています。ゼミは教師が学生から勉強する場でもありますが、最近は積極的
に教師を鍛えようとして、テクストの解読を容赦なく教師のほうに丸投げする学生もいますが、おてやわらかにお願いします。後期は卒論作成を視野に入れた報
告などをとりいれます。
2005年度は、『未開人を映画にとる』というテクストを読みました。ドイツにおける植民地主義の問題を、映画史と文化人類学の接点に着目して論じるとい
う興味深いものでした。2006年度は、その延長上で、ナチス・ドイツによるウクライナ占領政策を、ヨーロッパ植民地主義の伝統との関連で考える本を読み
ました。2007年度は、フリーメイスンなどのアソシエーションをもとに、18〜20世紀のヨーロッパ市民社会をとらえなおす作業をしました。
(近年分)
「『模範植民地』青島が目指したもの−膠州湾租借地の目的と港湾、鉄道、鉱山開発」/「雑誌にみるナチの女性像−第二次世界大戦期を中心に−」/「バウハウスに見る近代モダニズム建築がもたらしたもの−ドイツと日本を例に−」/「『母の日』という戦略−ドイツと日本に『母の日』が定着するまで」/「マリア・テレジアと家族戦略」/「愛唱歌から見たナチ体制下の青少年」/「『国制改革』の精神と『自然観』−ハプスブルク帝国の2人の君主 マリア・テレジアとヨーゼフ2世の場合−」/「カントルと都市−18世紀前半のハンブルク市におけるヨハネウム・カントルの役割−」
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