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2025年4月1日更新
「子ども」という人間存在の原点から、
理論・実践・対話を通して、人間・社会・文化の生成過程を探究する
「子ども」という視点を通して、人間・社会・文化を原点から探究する
子どもは人間の原点であり、その世界は深く広大なものです。また子どもは未来の作り手であり、その学びと成長を支えることは、持続可能な社会を築く上で不可欠です。時代の最先端を生きる子どもたちは、現代社会の複雑な課題に直面しています。こうした社会的課題に取り組むための知識や研究が求められている今こそ、「子ども」という視点をもつことによって、その課題を新たな形で捉え直し、打開していくことが可能になります。
子ども学プログラムでは多角的なアプローチを通して、人間・社会・文化の生成過程と構造を探究することを目的としています。学際的な研究とともに、教育・保育の場などにおいて、実際の子どもの姿に触れて知ることが、こうした探究を人間的でリアルなものにしていきます。
理論・実践・対話による多様な学び
子ども学プログラムでは、「子ども」や保育・幼児教育に関する理論を、多様な専門領域の観点から多角的に学びます。子どもとその成長を根本から考える教育・保育思想、その実践にかかわる保育学、子どもの発達やその内面を理解する心理学、マクロな視点から子どもが生きる世界を俯瞰する社会学、子どもや教育を支えている教育制度や、時空を超えてその変遷をたどる歴史学など、学びは多彩です。また、同じキャンパス内にあるナーサリー・こども園・幼稚園など、0歳からの子どもたちが生活する場に臨み、フィールドワークやインターンシップを通して実践的に学びます。
これらの学修で大切にしたいのは「対話」です。学生/教員/子ども/保育者/自己など、それぞれの間でなされる対話の積み重ねが、学びの深化をもたらします。2年次後期からの演習でも、学問的対話を大切にしながら自身の問題関心を深め、4年間の集大成としての卒業論文につなげていきます。
本プログラムでは、幼稚園教職課程の科目を展開しています。
お茶の水女子大学は1875(明治8)年、東京女子師範学校として開学以来、女子教育、女性のキャリア形成に取り組みながら、附属学校園と連携して、日本の教育・保育をリードしてきました。一つのキャンパス内に、大学と、幼稚園から高校までの附属学校園が共存している、唯一の国立大学です。
附属幼稚園は1876(明治9)年に創設された、日本でもっとも長い歴史をもつ幼稚園です。2005年には学内保育所いずみナーサリー、そして2016年には文京区との協働により、子育て支援の推進と幼児教育の質の向上をめざして、文京区立お茶の水女子大学こども園が創設されました。子ども学コースでは、これら3つの園と連携し、子どもの実際に触れて学ぶことができます。
こうした歴史の中で、本学は教育・保育を先導する研究者を輩出してきました。中でも、「日本のフレーベル」とも呼ばれる倉橋惣三(1882-1955)は、附属幼稚園主事(園長)を長く務め、子どもを深く尊重する人間的な保育を全国に広め、現代の教育・保育に今なお大きな影響を与えています。
戦後、新制大学となったお茶の水女子大学には、倉橋の主唱で家政学部児童学科が創設され、心理、教育、医学、福祉等、幅広い視点からの学際的子ども研究が進められました。本学で学んだ卒業生たちは、教育・保育・心理臨床・福祉の現場や、大学の研究者として、子どもたちに貢献し、多くの後進を育ててきました。
児童学科は1992(平成4)年には学部改組により、生活科学部人間生活学科において、保育・児童学と臨床心理学を一体化した発達臨床学講座(2004年から発達臨床心理学講座)となります。そして2018年度からは、本学における心理・教育・社会・保育・臨床にかかわる組織が再編され、文教育学部人間社会科学科に子ども学コースが創設されました。
子ども学コースは、本学150年にわたる歴史を受け継ぎながら、人間の原点としての子どもを深く理解することを目指しています。附属幼稚園やこども園、ナーサリーなどと連携し、子どもたちの実際の姿に触れて学べることも大きな特色です。そうした学びが、幼稚園教諭をはじめとする教員免許取得においても、教育・保育の根本を捉え、子どもたちに真に貢献できる教員となることを可能にしています。同時に、行政職・一般企業に就職する卒業生も輩出しており、子ども学から得られた人間理解は、社会の幅広い領域で活躍する力となっています。