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International Public Speaking Competition 2018に出場して

2018年7月27日更新

  International Public Speaking Competition 2018に出場して(2年 上江洲 まりの)

 今年の5月14日~19日の間、私はロンドンで開かれたInternational Public Speaking Competition 2018へ日本代表として出場してきました。この大会には世界50ヵ国、52名がそれぞれの国を代表して出場することができます。大会期間1週間のうち、はじめ2日間はワークショップやツアーが行われましたが、3日目から本格的に大会が始まりました。大会では「Prepared Speech」と呼ばれる、予めテーマが与えられ、それぞれで用意してきたスピーチと、「impromptu speech」というその場でテーマが与えられ、15分間で即興でスピーチを仕上げる形式の2種類がありました。参加者はどちらにも出場して、その上位7名が決勝へと進出します。

 今回のprepared speechのテーマは”Great artists have no country”でした。このテーマを目にしたとき、ひとりの日本人オペラ歌手が思い浮びました。母がyou tubeにあがっている彼女の動画を見せてくれたことを思い出したのです。彼女の名前はマリア・セレンといい、性同一性障がいを抱えて生きています。彼女には天性の美声があり、ソプラノとテノールのどちらも操る、いわゆる両声類と呼ばれる歌手のひとりで、世界的に活躍していている方です。私の周りには以前からLGBTに属する人々が多く、彼らの存在が当たり前になっていました。しかし、この動画をきっかけに母の親友でゲイでもある男性は仕事に支障を来すという理由で職場でカミングアウトできずにいたり、母の教え子で性転換をした男性は生命保険が得られないという現状を知りました。そんな彼らのためにも私が伝えられることがあるのではないかと思い、このスピーチを書き始めました。77歳になる祖母に、もし彼女の息子、私の叔父がLGBTだったとしたらどう思いますか、という質問を投げかけてみました。沖縄の小さな島の中で生きてきた彼女の持つ価値観や文化を考慮したうえで、彼女から返ってきた、「きっと彼を受け入れらない」という答えはある意味で想像ができていました。しかし、彼女にマリア・セレンの動画を見せるとその歌声の美しさに心から感動していました。マリア・セレンのように性別や国籍を越えて人々の心に訴えかけられるアーティストの存在がLGBTなどへの理解につながると思い、スピーチを発表しました。スピーチを終えたあとには、実際にLGBTだという出場者が「このテーマを話してくれてありがとう。感動した。」と声をかけてくれたり、スリランカからの出場者からは「アジア人のあなたがこのテーマを扱うことにすごく意味があると思う。ありがとう。」と言葉をもらい、反響も大きかったです。

 Impromptu speechでは、”Happiness is the function of accepting what it is”というテーマを与えられました。限られた時間のなかでスピーチを仕上げることは決して容易なことではありませんがが、自分自身の経験に置き換えて考えることを心掛けました。今回私はこのスピーチの中心に祖母を据えました。というのも、私の祖父はアメリカ人で、軍人であり、沖縄の基地内で祖父と祖母は出会い、二人の子どもを授かりましたがが、結婚し一緒に住むことは当時のアメリカ人に対する偏見や差別から叶わなかったのです。しかし祖母はその現状に対しても希望を捨てず、女手一つで子どもを育て上げました。アメリカと日本のハーフの子どもに対する偏見もありましたが、そのことに誇りを持つように教えました。母が20歳になったとき、自分の力で祖父をアメリカで見つけ出し、そこから私たち家族の交流は再開しました。祖母があのとき、希望を捨て努力していなかったら今の私はいないでしょう。英語を学びたいと思ったのも、祖父やアメリカの家族と会話がしたいと思ったからです。きっと目の前の現状に挫けそうになることは誰にでもあると思いますそんなときも、すべてのことに意味があると信じ、それを受け入れたときに幸せはやってくると思います。これが私のimpromptu speechでした。

 結果はあとからついてくるものだ、といいますが、その通りに私の2つのスピーチはどちらもトップ5に入りました。残念ながら、決勝に進むことは叶いませんでしたが、納得のいく結果でした。決勝7名のスピーチは圧巻であり、まるでTEDスピーチを見ているかのように、彼らのスピーチに引き込まれました。世界にはまだまだ上がいることを知ったいま、日本代表として出場できたことに感謝と誇りを持ち、今回得た学びを努力に移したいと思います。

上江洲01
  アン王女に宮殿へ招かれた際の様子
上江洲02
決勝にいらしてくれた外務省の方と


              

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