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【コロナ禍における留学記(ノルウェー)】

2020年7月17日更新

コロナ禍におけるノルウェー留学記(ノルウェー科学技術大学)(3年 卯月伶奈)

2020年7月掲載

3月中旬のある日。いつも通りに大学(ノルウェー科学技術大学)のキャンパスへと向かおうとしていた私は同じフラットの友人たちに呼び止められた。「まだ気づいてないの?今日から休校だって。」これが、現在も世界中を襲う目に見えない脅威・新型コロナウイルス感染症を一気に自分ごととして捉えるようになった瞬間だった。

発生地である中国・武漢と関係が深く1月頃からコロナが世間の関心を集めつつあった日本とは異なり、ノルウェーでは当初この一件がどこか対岸の火事のように認識されていたように感じる。実際私自身も北欧から遠く離れた「アジア圏で流行している感染症」としか認識しておらず、事の重大さに気が付かずにいた。しかし、感染者が初めてノルウェー国内で確認されてからは日々指数関数的に増え続け、3月23日にはとうとう外務省が定める感染症危険情報が「レベル3:渡航中止勧告」へ引き上げられるほど深刻な事態となったのだ。

すぐに緊急帰国を検討するように本学の教員からも連絡があった。しかし、既に3月中のEU経由フライトは満席、4月以降は多くの航空会社で運休が決定されていた。ロンドンで一緒に過ごした多くの友人たちは日常生活が困難になり次々と帰国していく中、いつ帰国できるのかわからないという不安に苛まれながら留学を続けることとなった。

大学は休校となり、オンラインで全ての授業やテストが実施されるなど生活が大きく変わっていった。グループで取り組むレポート課題もメンバーと実際に会うことはままならず、工夫が求められた。奇しくも欧州戦勝記念日には教授と一対一・zoom使用という条件のもと期末プレゼンテーションを行った。画面越しにうまく伝えられるか心配だったが、その日にちなんだノルウェーの歴史や文化についてお話ししていただき楽しい時間を持つことができた。当初予定していた留学生活とは異なるが、実り多い時間を過ごすことができたと考える。 

幸いなことに私が滞在していたトロンハイムでは、買い占めが起こったりアジア人差別を受けたりすることはなかった。連日の暗いニュースに気が滅入ることもあったが、フラットの友人たちとの交流が大きな支えとなった。近所を散策したり夜遅くまでおしゃべりを楽しんだりしたことは忘れられない思い出となっている。

EUの入国制限措置が何度も延長された結果、帰国に至るまで5回も予約フライトがキャンセルされるという経験をすることとなった。乗客が20人弱しかいない日本行きフライト、空港到着後厳戒態勢の中で受けたPCR検査など最後まで「普通」ではない経験尽くしの9カ月間であった。本学の担当の先生方、日本大使館や旅行会社の方々には大変ご尽力いただき感謝している。多くの出会いや経験を通して得たものを還元するべく、今後も邁進する所存である。

ノルウェー①

ノルウェー科学技術大学のキャンパス

ノルウェー②

エルジェセター橋から臨むニデルバ川・
ニーダロス大聖堂

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