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2024年5月8日更新
2023年度は29名の学生がグローバル文化学環を卒業しました。その中で、卒業研究提出者の中から成績優秀な人に授与される「グローバル文化学環奨学生」には、大谷理香さんと太田朝弓さんが選ばれました。
大谷さんの卒業研究『タイにおける都市難民が直面する貧困ーバンコクのモン難民コミュニティの事例からー』は、難民条約未批准国のタイにおいて、政府からの庇護や難民キャンプでの支援を受けることなく都市に暮らす「都市難民」に着目し、彼らが直面している貧困の実態を就業機会、食、住居、教育、医療の5つの観点から考察した意欲的な論文です。バンコクにて約1ヵ月間、迫害によりベトナムからタイに逃れてきたモンの人びとに対して聞き取りや参与観察を行い、彼らが直面する困難な状況のみならず、そうした状況に柔軟に応答している姿や民族的なアイデンティティを継承していく工夫などを、人びとの語りを通して生き生きと描き出しています。結論では、モン難民の「自助」や「共助」のみに依拠するのではなく、国際社会が「公助」の責任を果たすべきことを提言しています。モン難民の直面する貧困の実態を、丹念なフィールドワークを通して実証的に検証し、結論を導き出していることが高く評価され、受賞に至りました。
太田さんの卒業研究『カンボジアの社会的養護における脱施設化政策のこれから――「教育環境孤児」の突き付ける問題――』は、現代カンボジアでの孤児の教育のあり方に鋭利な批判を投げかけ、柔軟な発想で対処策を提起する意欲作です。UNICEFなどの公的機関では家庭での就学を最善とし、孤児院からの脱施設化を進める公的言説が強いですが、カンボジアでは実際には保護者が存在するのに孤児院で生活する事例が多く、一律の脱施設化が効果的でないと主張します。地域や親族のネットワークを駆使した多層的な受け皿がここで提起されます。多数の文献渉猟も立派ですが、著者は長らくカンボジアの孤児院への支援に関わり、現地を訪れた体験をもとに、施設関係者にネットでインタビューも行うことで、ビビッドな記述を実現しました。
2023年度は徽音堂にて卒業式が行われ、その後、卒研主指導教員から学位記等が学生に手渡されました。グローバル文化学環奨学生へは、授賞式にて主指導教員から賞状・賞金が授与されました。
※2023年度卒業生の卒業研究タイトル、就職先・進学先一覧は下記関連リンクから見ることができます。